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「森園すず」
「ちょっ!」
突然、フルネームを呼ばれ、一気に恥ずかしさが増す。
「名前、言わないで!」
私は自分の名前が嫌いだ。
『すず』なんて、大人しそうで可憐な女の子って感じで、私には似合わないからだ。
「ふーん…お前、名前呼ばれるの苦手なんだ…」
面白い玩具を見つけたように、ニヤリとする岸谷。
くっそ!
またも弱味を握られたようで悔しい。
「俺は、お前の名前も、勤め先も、携帯番号も知った」
「仕事上、ね」
教えたくて教えたものじゃない。
「そうだ。1か月前のあの夜とは違う。それがどういうことかわかる?」
「何が言いたいのよ?」
勿体つけた物言いにイライラする。
「俺との接点は解除できない。
お前は、あの夜のように、俺の前から消えることはできないんだ」
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