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私は課長の顔をまじまじと見つめる。
荒木雅彦(アラキマサヒコ)37歳、独身。但し、バツイチ。
社内の人望も厚く、出世も早い方で、容姿もそこそこ良い。
買い物件であることには、間違いないだろう。
しかし 、今まで上司と言う側面でしか接してこなかった相手を、突然、男として考えろと言われても難しい。
恋愛事がとんとご無沙汰なので、こんな時どうしたらいいのかも思い付かない。
頭の中がぐるぐると渦巻く最中
ヴヴヴヴ…
「--ッ!」
響いたバイブ音。私の携帯だ。
そして、一瞬見えた『岸谷 改』の着信表示。
慌てて、バンと叩きつけるように画面に手を被せた。
なんてタイミングでかけてくるんだよ!
どいつもこいつも、予期せぬタイミングで焦らせる。
顎をしゃくって課長が促すので、「すみません」と断りを入れて、通話ボタンをタップした。
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