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「なんちゅー顔してんだよ」
こいつの第一声って、どうしてこうもムカつく一言なんだろう。
あの夜と同じ所に座っていた岸谷は、私がBarに着くなり、この言葉を発した。
「あんたが無理やり呼び出したからでしょーが!」
苛立ちをカツカツとヒールの音で響かせ、岸谷の後ろを通り抜けて、私もあの夜と同じ席に座る。
「いらっしゃいませ」
顎髭のバテンダーの笑顔も、あの夜と変わらない。
「スクリュードライバーを」
「畏まりました」
今日は酔う訳にはいかないから、軽めのカクテル。
「お姉さん、甘いの好きだね」
「……」
岸谷を無言で睨む。
これ見よがしにあの夜と同じ呼び方…『お姉さん』
いちいち癪に障る男だ。
「お待たせしました」
顎髭のバーテンダーは、私達の微妙な空気を割るように、オレンジ色のカクテルを私の前に置いた。
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