1502人が本棚に入れています
本棚に追加
私は下を向いたまま、ちょこんと岸谷の肩に自分の頭をつけた。
すると、今度は身体ごとふわりと岸谷に包み込まれる。
その温かさに安心する。
「あの男が言う通り、男と女は違う」
蛇男と同じ言葉だけれど、それは低く優しく耳元に残る。
「力で男に到底適わないのは、俺と過ごしたあの夜で嫌というほど思い知っただろ?」
そうだ…あの夜、どんなに逃れようとしても、ずっと、この男の腕の中から逃れることが出来なかったじゃないか。
「だから、ダメだ。誰もいない所で男と争うなんて無謀だ。わかるな?」
「うん…」
素直に頷いた。
いつもの憎まれ口なんか出てこなかった。
怖かった。
あんな風に、男から悪意の籠った暴力を受けたのは初めてだった。
だから、ただ怖かった。
岸谷の胸元をギュッと握り、しがみつくように胸の中へ顔を埋める。
・
最初のコメントを投稿しよう!