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私の背中を優しく撫でる大きな手の感触。
守られているような居心地の良さが、私を次第に落ち着かせてゆく。
どうして、この男は私が弱っているところへ、タイミングよく現れるのだろう。
運命みたいなものを感じそうになって、悔しい。
運命みたいなものを信じていないのに、嬉しい。
説明のつかない感情。
でも、良かった…
見つけてくれたのが、岸谷で良かった。
こんなみっともないところを、誰にも見せたくはない。
そう思った直後にハッとする。
え? 今、私、何て思った?
岸谷で良かった?
どうして…?
自分自身に困惑する。
岸谷の腕の中で、安心しきっている自分がいる。
いつも懸命に強がっている私は、どこにいってしまったのか。
こんなのいつもの私じゃない!
そう自覚し、慌てて岸谷の腕の中から逃れようとした。
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