7

16/29
前へ
/35ページ
次へ
私の背中を優しく撫でる大きな手の感触。 守られているような居心地の良さが、私を次第に落ち着かせてゆく。 どうして、この男は私が弱っているところへ、タイミングよく現れるのだろう。 運命みたいなものを感じそうになって、悔しい。 運命みたいなものを信じていないのに、嬉しい。 説明のつかない感情。 でも、良かった… 見つけてくれたのが、岸谷で良かった。 こんなみっともないところを、誰にも見せたくはない。 そう思った直後にハッとする。 え? 今、私、何て思った? 岸谷で良かった? どうして…? 自分自身に困惑する。 岸谷の腕の中で、安心しきっている自分がいる。 いつも懸命に強がっている私は、どこにいってしまったのか。 こんなのいつもの私じゃない! そう自覚し、慌てて岸谷の腕の中から逃れようとした。 ・
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1502人が本棚に入れています
本棚に追加