1502人が本棚に入れています
本棚に追加
「あとでちょっと聞いた話なんですけど、岸谷って母一人子一人で苦労したらしいんです。だから、そういう差別的なことや理不尽なことが嫌いなのかもなぁって」
「そうなんだ…」
あの夜、岸谷が私を受け入れてくれたのは、そういうものを感じ取ったのかもしれない…とふと思った。
どうして、岸谷が私に興味を持ったのか、ずっと不思議だったのだ。
小野寺の話を聞いて、あの夜のことがしっくりと胸に収まる。
「それにしても、岸谷ってチャレンジャーだなぁ」
「へ?」
「係長にお説教したってことでしょ?」
「…まあ、そだね」
「フフフ…シュンとした係長を見てみたかったなぁ」
そう言えば、課長も同じこと言ってた。
「私って、そんなにシュンとしない?」
「しないでしょ。社内ではピンと気を張っているじゃないですか」
「確かに」
弱味を見せないように、懸命に虚勢を張っている。
・
最初のコメントを投稿しよう!