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「あとでちょっと聞いた話なんですけど、岸谷って母一人子一人で苦労したらしいんです。だから、そういう差別的なことや理不尽なことが嫌いなのかもなぁって」 「そうなんだ…」 あの夜、岸谷が私を受け入れてくれたのは、そういうものを感じ取ったのかもしれない…とふと思った。 どうして、岸谷が私に興味を持ったのか、ずっと不思議だったのだ。 小野寺の話を聞いて、あの夜のことがしっくりと胸に収まる。 「それにしても、岸谷ってチャレンジャーだなぁ」 「へ?」 「係長にお説教したってことでしょ?」 「…まあ、そだね」 「フフフ…シュンとした係長を見てみたかったなぁ」 そう言えば、課長も同じこと言ってた。 「私って、そんなにシュンとしない?」 「しないでしょ。社内ではピンと気を張っているじゃないですか」 「確かに」 弱味を見せないように、懸命に虚勢を張っている。 ・
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