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「前言撤回していいか?」
「え?」
「恋愛は自由で、選ぶ権利はお前にあると言った。だけど、あいつはやめとけ」
「……」
私は何と答えたらいいのか解らなかった。
赤信号で停車し、課長はこちらへ視線を向ける。
「どんな理由があるにせよ、仕事場に言い寄る女がやって来るなんてのは愚の骨頂だ。あのお嬢さんの調子じゃ、一度や二度じゃないだろう。そんなことを容認しているなんて、俺としては許しがたい」
岸谷に対して不信感を見せる課長。
お嬢様が仕事関係者だとは思えない。
女性スタッフまで『お嬢様』と呼んでいたくらいだ。
そんな人物が職場にまで押し掛けてくるなんて、どう考えてもおかしい。
仕事に実直な課長の指摘は尤もだ。
「森園…最初から苦労が見えてる奴なんかやめてくれ」
課長は真剣な眼差しで訴えた。
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