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「一応、念押ししとくけど、狡賢い俺は病人で思考が鈍っているお前に付け込んでます」
宣誓するみたいに手を掲げた茶目っ気ある課長に空気が和む。
「本当にズルい人はそんなカミングアウトしませんよ。課長」
「そうか?」
「そうですよ…フフフ」
あんなにもギスギスしていた心が解されていゆく。
ああ…堀ちゃんが言ってたことは本当だ。
この人は、いつも先回りして私のことを考えている。
自分の事を後回しにして。
浜本と別れた後もそうだった。
周りの好奇な視線に苦しんでいた時も、彼は全く変わらず、私の傍でこうやって温かい空気を作ってくれていた。
自分だって、辛い問題を抱えていたのに。
鈍感な私は、そんなことに気付かずに、どれだけ彼に甘えていたのだろう。
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