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「カミさんに…いや、元カミさんだな。先月、アイツに子供が出来た。俺と別れた後、再婚して子供を授かったんだ…」
そんな…!
言葉にしがたく、ハッと息を飲む。
しかし、目の前の課長は穏やかに微笑んでいる。
「悔しい、なんてことは全然ない。反対にホッとした。本当にホッとしたんだ…やっと、何か重たいものから解放されたと思ったよ」
「課長…」
ああ…この人もずっと過去に縛られていたんだ。
私と同じだ。
消したくても消えないジレンマを抱え続けて。
「だから…かな。あの日…アイツから子供が生まれたって連絡を受けた日に、お前に俺の事を考えてくれって、つい言っちゃったんだ。そんなこと直前まで全く考えてなかったのになぁ…」
そう言って笑う課長は、さっぱりとした表情をしていて、吹っ切れた感じに見て取れた。
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