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それに引き替え、全く何を考えているのか解らない岸谷。
まるでゲームでもしているかのように私を翻弄して。
その上、あんな女が近くにいて。
どちらを選べば幸せになれるかなんて解りきっているのに。
だけど…
自分だけを愛してほしいという欲求。
子供を欲しいという本能。
二つの想いがせめぎ合う。
女こそ、現実的で打算的で……強欲な狡い生き物だ。
「すぐに答えが出ないのは解っているから気にするな。ゆっくり考えればいいさ」
何も答えが出ない。
課長の優しい言葉に、黙ったまま力なく頷く。
浅ましい自分に嫌悪しながら。
「さ、そろそろ社に戻るか」
「…はい」
課長は、さっきまで辛い話をしていたなんて素振りは全然見せずに、普段と変わらずに落ち着いた雰囲気で私へと声をかける。
私は、ただ課長の背中についてゆくしか出来なかった。
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