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どうにも朝から体が重い。
それは、岸谷に会う可能性が高いからかもしれない。
前回の打ち合わせ後から、何度か岸谷から電話とメールがあったが、仕事上のことは課長がやり取りしいていたので、構わず全部無視した。
課長の話を聞いて、岸谷と向かい合える自信がなかったからだ。
グラグラと危ない足つきで綱渡りしているような。
岸谷を好きだと思った自分が幻想のような。
社内にいると、つい課長を目で追って。
罪悪感と焦燥感が渦巻いて。
「係長、大丈夫ですか?」
タクシーから降りる時にちょっとふらつき、堀ちゃんが心配そうに尋ねてきた。
「うーん…風邪かなぁ…」
眉尻を下げ、苦笑いして誤魔化す。
「具合悪くなったら言ってくださいね?係長はすぐ我慢しちゃうから」
「はいはい」
「もう!ホントに言ってくださいよ!」
やっぱり堀ちゃんは可愛い奴だ。
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