11

8/21
前へ
/35ページ
次へ
講演が開始されて暫くしてスライドの映写が始まり、会場が暗転した。 淡い光の中、隣に座る課長をこそっと覗き見る。 そして、余韻の残る唇を触る。 講師がポインターで赤く指し示す小難しい内容は右の耳から左の耳へ。 頭の中は二人の男の事で一杯一杯。 3年ぶりの恋愛に右往左往している自分がほとほと情けない。 傍に居て安心する男とドキドキする男。 どちらの男を選ぶべきなんだろう。 子供が望めない男と女の影がちらつく男。 それとも、どちらの男も選ばないほうがいいのだろうか? 33歳の仕事ばかりにかまけていた女に、突然降って沸いた男運が、こんな究極の選択だなんて酷すぎる。 だけど… 『すず!』 目を瞑ると思い浮かぶのはあの男だなんて。 バカは私だ。 キスの感触を忘れたくて、グイッと唇を親指で拭った。 ・
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1314人が本棚に入れています
本棚に追加