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講演が開始されて暫くしてスライドの映写が始まり、会場が暗転した。
淡い光の中、隣に座る課長をこそっと覗き見る。
そして、余韻の残る唇を触る。
講師がポインターで赤く指し示す小難しい内容は右の耳から左の耳へ。
頭の中は二人の男の事で一杯一杯。
3年ぶりの恋愛に右往左往している自分がほとほと情けない。
傍に居て安心する男とドキドキする男。
どちらの男を選ぶべきなんだろう。
子供が望めない男と女の影がちらつく男。
それとも、どちらの男も選ばないほうがいいのだろうか?
33歳の仕事ばかりにかまけていた女に、突然降って沸いた男運が、こんな究極の選択だなんて酷すぎる。
だけど…
『すず!』
目を瞑ると思い浮かぶのはあの男だなんて。
バカは私だ。
キスの感触を忘れたくて、グイッと唇を親指で拭った。
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