11

9/21
前へ
/35ページ
次へ
岸谷の顔を見なければ、課長の方へと気持ちが揺れる。 私を想いやってくれるこの人に応えるべきだとも考える。 だけど、岸谷と会えば、どうしても自覚するんだ。 やっぱり、この男が好きなんだと。 悔しい。 だから、会いたくなかったのに。 講演会が終了し、懇親会と言う名のパーティーが始まった。 「久しぶりだね。森園君」 「お久しぶりです。糸井先生!」 私に声を掛けてきたのは、営業課配属時代にお世話になった大病院の先生だ。 「元気にしてたかい?」 「はい」 「今は営業じゃないんだろ?」 「総務におります」 「そうか。君が担当を外れて寂しかったんだが」 「またまた、先生、お上手ですね」 先生と営業トークを繰り広げていると、女性が声を掛けてきた。 「糸井先生、ご無沙汰しております」 「おや。愛子(アイコ)ちゃんじゃないか」 ・
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1314人が本棚に入れています
本棚に追加