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岸谷の顔を見なければ、課長の方へと気持ちが揺れる。
私を想いやってくれるこの人に応えるべきだとも考える。
だけど、岸谷と会えば、どうしても自覚するんだ。
やっぱり、この男が好きなんだと。
悔しい。
だから、会いたくなかったのに。
講演会が終了し、懇親会と言う名のパーティーが始まった。
「久しぶりだね。森園君」
「お久しぶりです。糸井先生!」
私に声を掛けてきたのは、営業課配属時代にお世話になった大病院の先生だ。
「元気にしてたかい?」
「はい」
「今は営業じゃないんだろ?」
「総務におります」
「そうか。君が担当を外れて寂しかったんだが」
「またまた、先生、お上手ですね」
先生と営業トークを繰り広げていると、女性が声を掛けてきた。
「糸井先生、ご無沙汰しております」
「おや。愛子(アイコ)ちゃんじゃないか」
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