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先生に一礼し、ゆっくりと顔を上げた女性。
その顔を見て、愕然とした。
「先生ったら、綺麗な女性を連れて…奥様ですか?」
「ハハハ!こんな若い子にこんな爺さんが相手じゃ可哀想だろう。彼女は取引先のメーカーの子だよ」
「まあ…そうなんですか?凄く雰囲気がよろしかったから」
上品に笑う彼女は、岸谷を『改』と呼んでいたあの女だった。
「池上(イケガミ)です」
「あ…森園です…」
首を傾げて可愛く会釈するお嬢様に、たどたどしく挨拶を返す。
今日のお嬢様は紺色のワンピースドレスを着て、シックな装いだ。
「そういえば、愛子ちゃん、結婚目前なんだって?」
「フフフ…どうでしょう?」
勿体ぶった笑みを見せるお嬢様に、ぞわりと鳥肌が立つ。
ああ…やっぱり、この女が苦手だ。
私の本能が拒否ってる。
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