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「当ホテルをご利用いただきまして、ありがとうございまーす…フフフ」
綺麗な笑みを見せているのに、全然目の奥が笑っていない彼女に怯えにも似た寒々しさを感じる。
気持ちが悪い…
吐き気がする。
「こちらこそ、いつもお世話になっております」
血の気の引く身体に耐え、なんとか笑顔を保つ。
だけど、もう無理だ。
これ以上、この場に立っていられる自信がない。
「すみません。糸井先生、私はこの辺で…」
「おや、そうなのかい?残念だな」
「またの機会に…では、失礼します…」
先生とお嬢様に会釈し、その場を離れる。
武器となったヒールが、今は仇となったように足元をグラつかせる。
会場を出て、ロビーにあった大きなソファーに重い身体を沈めた。
「ハア…さい、あく……」
胸のムカつきが治まらない。
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