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遠目にぼんやり見つめていると、岸谷とお嬢様は私達には気付かず、二人でスタッフルームの中へと消えて行った。
そこは、さっき、私が岸谷に連れ込まれたところ。
あいつは、仕事中にホントに不謹慎だな…
「フッ…」
ホントにバカだ、私…
自嘲の笑みが零れる。
結局…そういうことか。
また……結婚相手は別ってことね…
「ハハッ!タチ悪っ!」
だったら、最初からアラサー女を相手にするなよなぁ…
わかってた……わかってたけど…!
前髪をぐしゃりと掴み、肩を震わせる。
「泣くな、森園」
「え?」
泣いてなんかない。
バカな自分を嘲笑っているだけ。
「あんな奴のために泣かなくていい」
課長の手が私の頬を優しく拭う。
「…ッ………なん、で…?」
自分でも頬を触ると濡れた感触。
そこで漸く自覚する。
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