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何で、涙が流れてるの?
いつも泣きたい時に泣けないのに。
どうして泣きたくない時に泣いてるのよ…!
悔しくて、唇を噛む。
「帰ろう。森園」
課長が優しく声をかける。
帰るってどこに?
帰りたくない。
今の私には、一人の夜は辛すぎる。
あの夜の様に…
「俺がいる。俺が傍にいる」
男に縋ってなんか生きられない。
でも、今は誰かに傍に居て欲しい。
揺れる心。
ギリギリのところで、首を横に振る。
「……私…っ!」
グイッと引き寄せられて、包まれる身体。
「いいんだよ。俺がお前の弱っている所に付け込んでいるんだから、全部悪いのは俺だ」
「課長…!」
ダメなのに。
包まれた身体が温かくて。
課長の背中にゆっくりと手を回す。
私は狡い。
欲して止まないのは、この身体じゃないのに。
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