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「不妊治療を続けていくうちに、俺はカミさんとするのがどんどんしんどくなってきた。 セックスってさ、肌と肌を合わせて、相手を感じるものだろ?だけど、俺ら二人には妊娠する手段であって、そんなものは二の次だ。ただの通過儀礼で、相手を求めるものじゃなかった そして、妊娠してなかったら、自分が責められているように感じて、どんどん卑屈になっていった…」 目の前の課長は、寂しそうに微笑みながら話している。 その姿が痛々しくて、堪らない。 「そんな時だった。総務に異動したのは…」 俯き加減だった課長が顔を上げて、私と視線が合う。 「俺にとって異動は天の助けだった。俺は…仕事に逃げた。残業続きでカミさんが苛立っているのは解っていた。だけど、俺は仕事に没頭しているほうが気が楽だった。最悪だろ?」」 私はフルフルと首を横に振る。 ・
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