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「森園……俺はイキイキと仕事をしているお前が好きだよ」
仕事人間の私を誰よりも見てきた人だ。
きっと、どんな男性よりも私のことを理解してくれる。
私の頬を優しく撫でる手。
ああ…この手を取れば、私は楽になるのかな…
狡いのは解ってる。
だけど、女一人で強がって生きるのに、正直疲れてる。
気怠い身体が救いを求めてる。
「……本当に、私でいいんですか?」
「お前がいいんだよ」
課長の手に自分の手を重ね、ギュッと握る。
ゆっくりと瞬きをすると、瞳から涙がポロリと一粒だけ零れ落ちた。
「もう泣くな。俺が傍にいる」
「…はい」
目を瞑る。
優しいキスを受け入れるために。
安らぎを得るために。
私は選んだ。
この手の温もりを。
心の隅っこに涙の理由を隠して。
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