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何で、このタイミングだったのかな……
冷たい掌に白い息を吹きかけながら、天を仰ぐ。
昨日の夜空には満月が映えていたけど、今日は雲がその姿を隠している。
私は、お嬢様との対面を終え、一人、帰路へと。
彼女は出てゆく私の背に向かって、『…ごめんなさい。ありがとう』と、か細い声でそう言った。
彼女の方法は間違っている。
だけど、私は彼女を責める気になれなかった。
純粋ゆえの歪んだ愛情表現。
彼女の愛は重く、哀しい。
それでも…岸谷はそれを解っていて、敢えて受け入れた。
だから、その責任を負っているのだ。
私と出逢う前に。
「世の中、こんなもんだ……」
改……私達はそもそも出会ったタイミングが間違っていたんだよ。
だから、いつも肝心なところでタイミングが合わない。
最初から、かみ合わない歯車だった。
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