眠れない夜に  one night side H

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浜本主任と別れて、表面上は平気な顔をしていたけれど、係長は変わってしまった。 男性と係わる時、バリアを張るようになった。触れれば、ビリッと電流でも走りそうな。 それ以来、頑なに男性と接するのを避けていた係長を、あの男がたった一日で解いてしまった。 それも私の知らぬ間に。 だから、気づいた時には遅かった。 係長は既にあの男を好きだったから… 「…岸谷さん、婚約解消しましたよ」 「え?」 随分前に岸谷さんから聞かされていたが、まだそのタイミングじゃないと思って、今まで黙っていた。 「お嬢様の病状も落ち着いてきて……二人で話し合った結果、だそうですけど」 「…そう」 その一言しか発さず、係長は切なげに微笑むだけだった。 凛君は、母親の膝の上から降り、玩具がある方へと歩く。 覚えたてのあんよは、見ていて、まだちょっと危なっかしい。
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