琥珀の檻

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 先生にとって私はどんな存在だったんだろうか?  私は彼の勤める美術大学の生徒であり、絵画モデルであり、愛人で…… 頭の中で複雑に絡み合い、ぐるぐる廻る。けれど、私の知りたいことはそんなことではなくてーー きっともう、その答えを知ることはできないのだろう。  私にとって先生はどんな存在だったのだろうかーー  今日、いや昨日は先生の御葬式だった。焼香の香りとともに漂う哀惜の念をただ見つめていた、まるで他人事のように。  先生が死んで悲しくない、寂しくないと言えば嘘になる。しかし、それ以上に安堵に似た感情が胸の中に満ちていて…… 私は本当に彼を愛していたのだろうか?  葬儀の帰り、足は自然とアトリエへ向かっていた。彼との思い出に触れ、そんな疑問を払拭したかったのかもしれない。ここにその答えがある、そう思えてしかたなかったのだ。  しかし、その答えを見つけることは出来なくて、代わりに見つけたのが先生の最後の作品、私の絵。その絵は額縁に入れられることもなく、無造作にテーブルの上に置かれていた。  先生は自分の未完成の作品を見られるのを嫌がった。だから、死の直前まで描いていたこの絵を見るのは初めてだった。
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