琥珀の檻

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 そんな世界から抜け出すために、私は絵を描いた。優しく包み込んでいた琥珀を壊して、閉ざされた窓を開け、何も持たずに外へと飛び出していく。そんな絵だったのだ。  自分の絵をテーブルに置き、先生の絵を手に持った。そして、ゆっくりと手に力を込めていく。絵は悲鳴をあげ、簡単に破れていった。  それが合図だったのか、私は何かに取り憑かれたかのように我を忘れ、何度も何度も、細かく細かく絵を破った。私の絵の上に、彼の絵だったものが散らばっていく。その度に涙が頬を伝った。  もう破ることが出来なくなっても、私はその光景をただ呆然と見つめていた。一度流れ出した涙は止まることも知らない。夜の冷たい風が私の頬を撫でていった。いつまでもこうしてはいられない。私は重たい腰を上げた。  先生から貰ったペンをメモと一緒に封筒へと戻す。窓はもう開かれている。あとはこれを置き、部屋を出るだけだ。それなのに、どうしてこんなにも胸が締め付けられるこだろうかーー  私はその琥珀の欠片を手放すことが出来ずにいた。そのままでーー そんな甘くて優しい声が聞こえてきそうな静けさだった。  その封筒から転がり出てきたペンの冷たい感触を、夜、月明かりの下で握りしめた。
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