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真弓は、互いの目鼻立ちが分かるところまで近づいて、
歩みを止めた。
しばらく二人は、
どこか気不味そうに見つめ合っていたが……。
そんな二人を見上げていた画一には、
ホテルでの雰囲気が漂い始めて……、
「お母さん、僕あのサンタクロースを見てくるよ」
と駆けて行き、その場を離れた。
「画一、遠くへ行ってはいけませんよーーー」
真弓と志津子は、
そんな画一の後ろ姿を見送って、再び向き合う形となった。
画一が去って気持ちが少し楽になったのか、先に志津子の口元が開いた。
「真弓さん、おはようさん。
先日は、ご期待にそえないお持て成しでごめんなさいね」
こう言う挨拶の苦手な真弓は、言葉を探し始めていた。
「ああ、気にせんで下さい、志津子さん。
あたしはね、あれから山手線に乗り込んで、
ぐるぐる廻りながら寝てしもうたがよ……アハハ」
「ハハハ……そうなの。
相変わらず可笑しな人ですね、真弓さんは」
そんな会話に気持ちも緩んだ真弓は……。
「志津子さん、あたしはこれで失礼するがね」語尾は力強かった。
「ええっ……?
真弓さんは、絵一さんに逢いに来られたのでしょう?」手に下げた紙袋を指して言うのだった。
「そうじゃよ。
じゃけんど、あんた達……家族のお邪魔をする気はないがね」紙袋を上げて下ろした。
「お邪魔……」
志津子は鋭く真弓を睨んでから、
どこまでも青く澄み切った師走の大空を仰いだ。
しばらくそうしていた志津子は、
ゆっくりと体勢を整えると真弓に言うのだった。
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