第一章

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「く、くるな!それ以上近付いたら撃つぞ!」 男はそう言って少年に銃を向ける。 だが、その手が震えているせいか、はたまた腰を抜かしているせいか、その声が少年に恐怖を与えることはない。 少年は楽しげに手を広げ、そこかしこに転がる"仲間だったモノ"の一つ一つに視線を向けた。 「こーんなに俺の仲間殺してくれちゃったわけだから?ちゃんとお礼はしねーとな。ほら、よく言うだろ?目には目を、歯には歯を、」 死には死を、ってな。 「つっても最後のは俺が作ったんだけど…。って、もう聞こえてねーか。」 男の腹部に深く突き刺さったナイフから手を離し、崩れ落ちる男の身体を綺麗によけると、少年は動かなくなったそれに背を向け歩きはじめた。 血に濡れた銀髪の前髪を鬱陶しそうにかき上げながら、少年はケータイで何処かに電話をかける。 「もしもーし、千里さん?俺っすよ俺ー。え?だから俺ですってー。いやいやおれおれ詐欺じゃないっすよー。いや、ちょ、待って待って、俺ですって、響也ですって!だから電話切らないでっ!」 先程の雰囲気とはガラッと変わり、まるで高校生のような雰囲気を晒し出す少年。 先程まで対峙していた者が見れば二重人格を疑うであろう豹変ぶりである。 電話口では、相手が重々しく溜息をついていた。 「任務遂行しましたよっていう連絡っす。え?生存者?そんなの俺だけですけど。で、次は何処に?…は?帰って来い?ちょ、ま、それってどういうーーーーー切れた。…まぁ、いっか。」 少年は最近では珍しい折りたたみ式の携帯をポケットに直し、迎えに来たのであろう黒塗りの車に乗り込んだ。
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