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薄暗い建物に挟まれた道を行く。路地裏。細道。
ビルの裏口は表の華やかさとは打って変わって、綺麗とは言えず鉄骨部分はサビ、朽ちていた。
傘を差し進む。
この世界にもこんな場所があるのかと上を見上げた。
ビルの隙間から指すのは光なんかじゃなく、灰色の空から降る雨。
途端キイィンーと耳鳴りがし、振り向くとそこには人とはいい難い異型な物がこちらにむかって弦のようなものを伸ばしていた。
反射的に傘をそのまま盾代わりにし、弦のようなものを弾く。
バチィン!!と液体を打ち付けたような音がし、弦は弾ける。同時に弾けた破片が顔にあたり、頬を掠った。
「…っ!!」
傘を閉じ、構える。
再び弦のような物が伸びる。それを傘で斬ると、部分が爆ぜ、義春の身体に赤い線を入れた。
「……!!」
動かざれば弦でやられ、動けば爆ぜやられる。
雨で濡れた髪から雫が垂れる。
頭を過るのは同じ言葉。
逃げろ。逃げろヤバイ逃げろ逃げろ……!!
傘で伸びる弦を叩き切る。その爆ぜた部分が、義春の左足を掠ると同時にフラグメントの動きが一瞬止まる。その隙に義春は走り出し路地の角を曲がる。
追いつかれる前に人目につくところ、もしくは巻かなければ。
その目論みも次の角を曲がった途端。崩れ去る。
「くそっ!!!」
目の前に見えたのは行き止まりの壁。
ジリジリと距離を詰められる。
トン…
背中に触れるのは冷たい壁。
追い込まれた……!!
チッと舌をならし睨む。
フラグメントはヒュンと弦を伸ばす。
「…ーーーーっ!!!」
ビンッ!!
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