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「あら、それはどうしてそう思ったのかしら」
タバコをポケットから取り出して銜え、火をつけて煙を吐く。
「拉致った張本人のお姉さんがわざわざ出迎えてくれたんだ。それなりに理由があるんじゃねーの?
どんな奴を連れてきたのか、ちゃんと狙った奴を連れてきたのか……」
「ほう……」
「とりあえずお姉さんの話を聞くから愛銃返してくれる?それ本当に大切な物だから」
空中から降ってくる白銀の銃。月の光を反射して冷たく光るそれを拾い上げ、コートに収める。
「約束通り聞いてもらうわ。あなたは拉致されたのではなく、ここに迷い込んだの。私の能力によってね……」
紫の発言に、違和感を感じてから今まで起きたことを瞼を閉じて整理する充。
(能力……迷い込んだ……空中から降ってくる……地面から出てくる……コートからくすねる……なるほど)
「何かわかったようね」
「お姉さんの能力はワームホールのようなゲートを繋げるってところか。銃をくすねたのも、返したのも、登場シーンも、そして―――俺が迷い込んだ原因もそのゲート。どうだ?」
「ご明察♪」
「で、俺は帰れんのか?」
「無理ね(キリッ」
「あ?(威圧)」
「じゃあ帰れない理由を見つける、という課題を貴方に与えるわ」
扇子で口元を隠し、クスクスと笑う紫。
「はぁ……で、その課題提出はいつなんだ?」
「わかった頃に聞きに行くわ♪それじゃあもう眠いし、私は帰るわね」
足元から地面に入っていく紫を止めようとするも、既に存在が消えていた。
「どうしろって言うんだよ……。」
「これを言い忘れていたわ!ようこそ、幻想郷へ♪」
「ちょっとま―――ってもういねぇのかよ。とりあえず人の痕跡を探してそっちの方へ歩くか……。」
時刻は5時前……まだ月は出ている……。おそらく日の入りは午後6時半……街灯もない場所だし、約12時間は誰も通っていないと考えるのが自然か?
……現在積雪は15cmほど、足跡が残っているかもしれん。
サバイバルナイフを取り出し、近くに生えている竹に傷を入れて目印にする。
「1人が長いと独り言が増えちまうな……やれやれ。にしても八雲紫だっけか、堪んねぇな……なーんてな」
足跡を探すべく、竹に傷を入れながら歩き始めた。
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