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彩さんが帰っても、おいしい鯛焼きをいただきながら、彩さんに抱っこされたことを思い出して、ぽやっと赤くなる。
保母さんっていいものかもしれない。
友達に抱っこされたことはない。
私の友達がどこか勇ましく、男らしいのが多いのかもしれないけど、肩を抱かれたり、頭をくしゃくしゃ撫でてくれることはある。
美女に抱っこされて、ちょっとご満悦。
私、何かをしたつもりもないけど。
なんだかご褒美。
「杏奈ぁ、杏奈ぁ」
ぽやぽやしていたら、そんな甘えた彼の声が聞こえてきた。
甘えられるくらいは元気みたいだ。
私は彼の部屋へといってみる。
彼は部屋の入口に座り込んで、私を見ると腕をのばしてくる。
大きな赤ちゃんがいるようにも思う。
恭太も抱っこと腕をのばしてくるから。
私は大きな赤ちゃんを抱っこしてみる。
熱っぽい。
これは水が必要かと思われる。
「立ち眩みで動けませんでした」
私を呼んだ理由らしい。
「寝ていろということです。お水と軽い食事持ってきますね。お粥かうどんかどっちがいいですか?」
「お粥。……杏奈が休みの日、俺が元気だったら3人でどっかいこ?今日、いい天気だしいきたかったんだけど」
私は彼を支えるように歩いて、彼をベッドに戻す。
彼はおとなしくベッドに転がって、私を見上げる。
彼の顔にかかる前髪を耳にひっかけて、お髭を指で擽るように撫でる。
髭が似合わない顔だなと思う。
「…髭剃りしたほうがいい?放っておくと俺でもこれはえるよ。間宮みたいに濃くないけど」
彼は自分の髭をうにうにさわって、軽く引っ張る。
「ダンディさに欠けますね、髭が似合わないと」
「……そろそろダンディと言われるほうがいいと思うんです。今年33だし、子供もいるし」
「40代になったらダンディになってください」
私は彼の髭を撫でて、立ち上がってご飯をつくりにいく。
私も…目を逸らすところもあるんだよって、彩さんに言えばよかったかもしれない。
私は約束がこわい。
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