桜の下で

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いい子ではなくて、いい嫁と言われたい。 出会いも結婚に至った経緯も、お遊びのようなものなのだけど。 今はもう、遊びとは言えない結婚生活。 お父さん、お母さんのお陰で金銭に不自由はないけど、お父さん、お母さんがいなければ、いつか彩さんに言われたように、電気も水道も止まった生活をすることになっていたかもしれない。 ご家族に受け入れてもらえているところで、二人だけの遊びのような結婚では終わらなくなっている。 この命がある限り、私はあなたを支え、慈しみ、愛する。 私に、あなたに誓った。 彼の誕生日を迎えられて、彼はまた1つ年をとれた。 頭が真っ白の白髪になるまで、ずっと一緒にいられるかな。 なんていうことを、最近思う。 彼が副作用に倒れることもなくて、ご飯もおいしいって食べてくれるから。 仲の良さそうなおじいちゃんおばあちゃんを見て、そこに夢をみてしまう。 あれになりたい、と。 あなたがいないと叶わない夢。 そんなものを描いてしまえるのは、きっとあなたがいてくれるから。 桜が咲き始めた頃、彼はお父さんからお仕事をもらえたようで、パソコンの画面と居間で向き合う。 恭太は彼に構ってもらおうと、彼のそばでパパとも聞こえることを言ってる。 彼の腕に手をのばしたりするから、私は恭太を彼から引き離す。 仕事の邪魔をしないのっ。 なんて無言で恭太に怒ってから、マウスをカチカチしている音に、そーっと彼のお仕事を覗いてみる。 図面だ。 四角いものと数字と。 適当にカチカチやっているように見えるのだけど、更に四角や線が増えていくばかり。 「……これ、柱ね。で、こっちが扉」 彼はそんな説明をくれながら、その図面の上のマウスポインターを動かす。 言われたら、なるほどと思える線と四角。 彼はファイルを開けて、似たようなものを見せてくれる。 ただ、さっきのものより不動産屋さんでよく見る図面になっている。 「これ、間宮の家の」 「天井の磔って図面にないんですか?」 「あれ見ていたんだ?細かいところ見てるね。雨漏りしたら大変だろうなというデザイン重視とは思わなかったところが間宮と観点同じだな」 なんて言われて、彼のお仕事の邪魔を私がしてしまっていることに気がつく。
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