桜の下で

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「お仕事の邪魔してごめんなさい」 「邪魔じゃないから。杏奈はどういう家に住みたい?これとか…これとか」 彼はファイルの中のものを次々と見せてくれる。 でも間宮さんの家でもわからなかった。 どんな建物なのかわからない。 間取りはわかるけど。 「模型ないとわかんないです。壁の色とか天井の高さとか見えないから」 「好きな間取りは?LDKワンフロアとか。床や壁も。杏奈の好み」 想像してみた。 間宮さんの家や彼の実家やこのおじいちゃんちを考えて。 でもこれがいいというのが出てこない。 「間宮さんの家って奥様の希美さんに似合ってました。孝太さんが考える私に似合う家がいいです」 なんて言葉にしてみると、彼は悩んでくれる。 私が上手く答えられなかっただけで、ちょっと悪いことしてしまったかなと思って苦笑い。 「ナチュラルカラー、ナチュラルビューティー。自然、四季…。君をイメージするとこんな感じ」 孝太さんが言う私のイメージに思わず笑う。 「着てる服ですよね。メイクもあまり濃くないし。もっとメイク上手くなりたかったんですけど、不器用みたいで。慣れるほどメイクしようとしていないのもありますけど」 彩さんに建ててあげる予定だった家は、きっと華やかな感じだったんだろうなと思う。 彼の実家のようなものを想像する。 その図面は見せてもらえないみたい。 見なくてもいいけど。 彼と彩さんが描いた夢。 嫉妬したくないし。 とか思いつつ、やっぱり嫉妬している。 「孝太さんの好みのものでいいです。孝太さんの理想の家に住みたいです」 私は言い直してみた。 彼の理想で、彼が一緒にいたいと思って結婚してくれたわけじゃないのは、よくわかってる。 私はその隙間に滑り込んだだけ。 たまたま私が一番最初に滑り込めただけ。 それでも愛は…いただけている。 「君となごなごできる縁側があるのがいいな。この家でじゅうぶんだけど、ちょっと広くて声届かないことがあるから、狭いほうがいい」 彼の言葉に嫉妬した気持ちも癒される。 私は彼に甘えるように、彼の肩に頭を傾けてくっついて、彼は私の頭を撫でて、額にキスをくれる。
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