354人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
お邪魔していますと口々に挨拶されて、会釈だけをなんとか返しながら、彼の声が聞こえてきたキッチンに向かう。
女性の靴もあったし、彩さんや知った顔もありそうなのだけど。
というか、これ、宴会してない?
キッチンに顔を出すと、彼は料理中。
その隣には恭太を抱いた女性。
他にも何人か女性ばかりがキッチンにいて、ここは彼以外の男もいないハーレムとなっている。
何事?
なんて思っていたら。
「お帰り、杏奈」
「帰ってくるの遅すぎ」
なんてよく知った顔とよく知った声。
私の友達がなぜかいた。
状況がまったく飲み込めない。
何も言えなかった。
「1年以上ぶりに会うんでしょう?老けていてわからないとか」
なんて言っているのは希美さん。
「ちょっと杏奈ぁっ」
真に受けた友達が私に怒って近寄ってくる。
「なんでいんのっ?」
私は久しぶりなんて挨拶もできずに聞いた。
「孝太さんに呼ばれたの。だいたいは聞いたけど、結婚したくらい報告してよっ。いつの間にかこんな赤ちゃんまでつくってるなんてっ」
「恭太くん、かわいすぎだよ?うちのと取り替えたいくらい」
まだまだ状況が飲み込めない。
彼を見ると、菜箸を片手にこっちを楽しそうに見ていた。
私は彼にサプライズをされた。
遅くなった披露宴。
家に招待されていたのは、彼の友人夫婦、私の友人夫婦。
30前半ばかりで、子供も小さいけど、赤ちゃんばかりがいるわけでもなく。
元気に走り回る年長さんもいる。
彼の友人の中には独身の人もいて、私の友達よりも彼の友達のほうが多くて、男の靴ばかりになっていたらしい。
広い部屋はたくさんの人で歩く場所もないくらい狭い。
寄せ集めた机の上には、女性陣と彼が作った料理やビール。
はみ出して、庭で花火をしている子供や縁側でのんびり話す人たち。
家でやるなら呼びすぎだと彼に言いたい。
披露宴という宴会。
私は高砂のような席へと座らされて、彼の隣に並べられる。
司会進行のように間宮さん夫婦が披露宴のような段取りで場をまとめてくれて、披露宴のように紹介をしてくれる。
こんな披露宴、私、いったこともない。
お金をかけない、二次会のような披露宴。
恥ずかしくて。
でもうれしかった。
最初のコメントを投稿しよう!