桜の下で

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悩んでも悩んでも出てこない。 「花嫁から花婿へ。本日の披露宴の感想と感謝の言葉を賜りたいと思います。では杏奈さん、お願いします」 私の友人は手をマイクのようにして進行のような言葉。 宴会はまだ終わっていなかったらしい。 彼は吹き出して笑う。 「杏奈のことだから、うれしかった、ありがとうで終わるだけですよ」 なんて彼に言われて、やっぱり?みたいな感じで私の友達も納得してしまう。 何かを言わなければとひどく焦る。 それで納得されてしまうのも、なんだか嫌なものだ。 「ちょっと待って、ちょっと待って」 「もういいよ。顔で選んで杏奈が不幸になってるわけじゃないって思ったし。顔で選んでもいい人いてよかったね」 友達に言われて、それを彼に聞かせないでと思う。 「まぁ、病気じゃなかったら、こんなイケメンに愛されるなんてないもんね」 ぐっさりきた。 思ってるけど言われたくないっ。 私の友達は容赦ない。 「失礼ですね。俺は杏奈と病気を患う前に知り合いたかったと思っているのに。杏奈が元カレと別れたくらいで。25くらい?俺は27くらいのとき」 彼は私の友達に言ってくれる。 「それ、彩さんとつきあったくらいですよね?」 私は彼に思わず言っていて、彼は言葉に詰まる。 彩さんは5つ年下だから22だったはずだ。 今も美女だけど、もっと輝いていたように思う。 どうせその頃に会ったって、彼の目が私に向いていないのは目に見える。 私はふぅっと溜め息をついて、洗った食器を片付けていく。 まだ濡れているけど、片付けないと山盛りになってる。 「あー、それ無理だね。杏奈、その頃、お母さんのことで大変だったし。彼氏に放置されていても、そっちに気を回していられなかったよね」 私はそのときのことを思い出して、また溜め息になる。 「私が25のときに母が亡くなったんです。22のときに姉が亡くなって。その頃に会っていても、私、ものすごーく暗かったと思うので、絶対につきあおうとも結婚しようとも思ってもらえなかったと思います」 私は彼に初めて話すなと思いながら、背中を向けたまま話す。 「正にダブルパンチ。彼氏は一人になった杏奈を支えてくれるどころか、さよなら。世の中にはそういう人もいるんです。だからイケメンやめなって私が杏奈に言っていたんです」 友達は彼に更に言ってくれて、私はぐらぐらになりそうだ。
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