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「その頃に会えていれば、俺ばかりが支えられることもなかったね」
彼はそんな言葉をくれた。
彼のもしもは、優しい。
涙、彼のせいでまた溢れた。
私は何度、彼に喜びを与えられるのだろう?
うれし泣きを何回してしまうのだろう?
私は彼に騙されているのだろうか?
彼は口がうますぎる。
「彼の気持ちがたとえ、一人だった私への偽善のようなボランティアでも…、私は彼がそばにいてくれるのがうれしいです。その命の最期まで、その灯火を守るように、彼の幸せを願ってそばにいたいです。愛しいとこんなに誰かのことを思ったことはありません。この命がある限り、私は彼を支え、慈しみ、愛していきます。彼からいただいた大きな宝物を大切にしていきます」
私は彼へ贈る私の言葉をそうまとめた。
泣きながらで、詰まりながらで、背中を向けていて。
彼のように堂々と言えなかった。
私の友達はよく言えましたみたいに拍手をくれる。
「これって人前式みたいだね。杏奈の友人の私たちが結婚の誓いを認めます、みたいな」
「幸せになれよ、杏奈。…って幸せ満喫してますね、この女。
お風呂借りまーす」
「えぇっ?私もいくっ」
なんて友達は逃げるようにお風呂にいきやがる。
なんか恥ずかしい。
勢いで言うこと多いかも。私。
二人きりにしないでいいのに。
私は涙を拭って、とりあえず片付けを続ける。
「人前式なら誓いのキスまで見ていってくれたらいいのに。……何回、結婚するんだろうね?俺たち」
彼は呟いたあと、私に問いかける。
「式は今回が初めてだと思います」
「杏奈にウェディングドレス着てもらったときも、俺にとっては結婚式だったよ。
キスして?」
彼に言われて、彼を振り返ると、うれしそうな笑顔でこっちを見ていた。
私は立ち上がって、片付けるお皿を手にしたまま彼に近づく。
私は少し背伸びをして、彼は私を支えるように腰に手を当てて。
その唇にキスをした。
私の生きている意味、あなたがくれる。
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