356人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
毎日、毎日、今日と同じ日が続くようにと思っている。
明日も明後日も、来年も10年先も。
進む時は止まらないから。
続くことを願っている。
のんびりと過ごして、ご飯を食べて。
空が暗くなると、夜空に大きな花火が打ち上がる。
恭太を足の間に置いて、浴衣も少し崩れた彼を隣に、縁側から花火を見上げる。
恭太の目には花火はどう見えるのかわからないけど、その音と光はわかるらしい。
パパと彼を呼んで、空を気にする。
「あれは花火。……花火の夜でしたね、杏奈さん」
「使い回しの指輪をくれた日ですか?」
「だからそれは悪かったってっ。そこのところは事情も説明したっ。間宮が悪いっ。
…好きですって君が言ってくれて、俺と知り合えて幸せだって言ってくれた。あれ、本気でやられました。恋愛もしていないのに結婚して。知り合って1週間もたっていなくて、まだまだよく知らない相手なのに、どきどきさせられまくって、落とされました」
私はその夜を思い出す。
彼と暮らそうと決めた夜。
細かくはさすがに覚えていない。
金魚すくい、指輪、ここに泊まったこと。
「一生幸せになれないって誰かかが言っていた気がします」
「……言葉まちがえてますよね。誰でしょうね?そんなこと言ったのは」
彼は誤魔化すように言って私は笑う。
「どうしてあんなこと言ったんでしょうね?落とされたのに」
「自分を留めようとしたんだと思います。君が可愛くて手を出しそうになって。自分の病気を考えて彩に言われたことを思い出して。結婚したけど、俺は君を幸せにはできないんだと思って」
私はそんな彼のそのときの心情を考えてみる。
私は思いきり恋愛になっていて、彼はひいていた。
私に少しは興味を持ってくれたことだけでもうれしいことかもしれない。
ただ、あのとき…と、私は何度も彼の隙間に入り込んだ自分を考えてしまう。
無言になってしまった。
耳に聞こえるのは花火が打ち上がる音。
夜空に花が開くたびに、俯いた視線の先も少し明るくなる。
最初のコメントを投稿しよう!