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―――ギキッ!
「う…っわああああっ!!!!」
ガッシャアアアアアア―――
ごんっ!!!!!!
鋭く短いブレーキの音、突然の叫び声、何かが倒れ、滑って、そしてぶつかる音。
何事かと振り向くと、相棒のケツにスクーターが引っ付き、その数メートル後ろには誰かが転がっているのが見えた。
雨の中、動かないそれに、サッと血の気が引く。
俺は慌てて駆け寄った。
「大丈夫か!?」
声をかけると、男は呻きながら身を起こした。
それに幾分かほっとしながら、体を起こすのを手伝ってやる。
二十歳前後、といったところか。
まだ少年のようなあどけなさが残る顔つき。
頬には擦り傷を作っている。
他に怪我ないか伺いながら、男に肩を貸した。
「――っ、…いってぇ……」
「立てるか?とりあえず、俺の車に行こう。」
「スンマセン---…って、車?」
男がいきなりはっと顔をあげ、視線を車にやった。
つられて俺も車をみる。
エンジンが燻るスクーターは、俺のオンボロ愛車のケツにぶつかって止まっていた。
一瞬の後、男が水溜まりの中に半ば倒れ込むようにして額を擦り付け、
「すんませんでしたあああああああっ!!!!!!!」
激しい雨音をものともしない謝罪を辺りに響かせた。
。
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