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初めて聞いたグラムの声。
それは何だか悲しい音だった。
「こんな山奥に隠れて、戦う力も放棄したのに」
グラムは僕を見ていない。
遥か遠くを見つめたままで。
「どうして人間は」
不格好な指を器用に動かし、グラムは胸部のハッチを開けた。
悲鳴をあげる錆び付いた扉。
「全て、終わらせよう」
木々の隙間から伸びた光が、暗いハッチの中を照らす。
「あ、あああ」
あの日の夢の違和感、不気味な感じの正体が分かってしまった。
「全部壊せば、滅ぼせば。静かで平和な世界が」
視界がなかったんだ。
操縦設備もカメラも、何もなかった。
ただぼんやり、グラムに乗っているんだと自覚していただけで。
あんなの、操縦士なんかじゃない。
あれじゃ、まるで。
「グラ」
グラムは干からびた僕を無造作に取り出し放り投げると、震える僕を不格好な手で掴んだ。
僕は友達だと思っていた。
そう思っていたのは、僕だけだった。
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