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ーーーなぁ、お前の名前カッコいいな!
入学式後、番号順に座らされた俺の真ん前には、屈託のない笑顔の少年がいた。
その表情にはまだあどけなさを残していた。
ーーーは?お前マジで言ってんの?
ーーーうん。
ーーーそうか?早口言葉とか逆から読んでも同じ~!とか思わないのか?
自己紹介とかすると、決まって言われるフレーズに俺は常々ウンザリしていたが、この少年は違う気がした。
ーーー…え?あ、そういえば……
ーーーそうだな!すげえ!イイじゃん一発で覚えてもらえるし!
ーーーそういう問題か?
ーーーうん、だって俺は普通だし、どっちかってーと女みたいな名前だし。よく『いくや』って間違えられるし。
ーーーふーん…
ーーーかなたって響きが男っぽくて、イイ名前じゃん!
目の前のコイツは本当に屈託なくよく笑う。
今迄、小さな頃からのコンプレックスだった名前が、少しはマシかと思えた瞬間だった。
そして、俺は初めて恋をしたんだ。
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