第二話

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 その話を彼女は上司の遺体捜査官取締役から聞いた。話してみて、まず思ったことは”変な人”だった。どうしてそんな入社をためらうような、明らかに不利になることを自ら話したのだろうか。そこまでして自分に拘る理由は皆目見当もつかなかった。しかし、不思議と”同じ匂い”がした。  はっと我に返った時はもう、エレベーターが目的の階で停止した状態だったので、私はすぐに降りた。その瞬間を持ち構えていたように、バケツに用意していた水を浴びせられた。  (入社早々にこれか)  人数は五人で、いずれも体格がいい大男共がそろっていた。私は行く手をぐるりと囲まれてしまった。一般人が粋がるなと口頭で苦情でも言われるのだろうか、それともまだ何か仕掛けてくるのだろうか、次の手を予測して身構えるとあっさりと立ち去った。目的が達成されたからだ。 「あ…携帯」  そういえば、防水機能は搭載されていない筈だ。これで壊れていたらまずいことになりそうだ。しかし、それよりも今は目の前のことを考えなくてはならなかった。先ほどの捜査官らの反応を見る限り、ここには敵しかいないだろう。誰に話しても、まず信用はされないと思った。ようするに我慢さえすれば済む問題だ。  この全身が濡れたままで会いに行っていいか、少し気が引けたが仕方がないので、そのまま社長室に向かうことにした。広い廊下を右に曲がれば自動販売機と簡易ベンチが設置された休憩所が見えた。  正面には細い通路があり、事前に施設見学をされた時には、夥しい数の書物を管理する保管庫につながる通路だった。確か寄贈書、上司である彼の収集した本を合わせると、延べ一千五百万冊以上にも上るほどであった。  そして廊下を左に曲がると社員食堂で、そこから延びる螺旋階段を上った先が社長室だ。  確か食事以外にも娯楽施設も完備したゆとりのあるため、食堂の規模は大きかった。まず室内席と、室外にはテラス席があり、その他にはダーツ、トランプなどだ。  また、映画館並みの巨大スクリーンを完備しており、休憩時間にはDVD鑑賞ができるようになっていた。但し中毒性があるので、麻雀、パチンコ、カジノなど、お金を賭ける娯楽は除外されていた。娯楽なら何でもいいという訳ではなかった。そして同じ理由でお酒も煙草も本部内で販売されていない。
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