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人知れず存在する組織があった。その組織がある場所は、数多くの高層ビルの立ち並ぶ大都会の東京だ。具体的にどんな組織かと言うと、大きく分けて二つだ。一つは遺体捜査官本部と呼ばれ、職務内容は主に遺体捜索を専門に扱うという、一風変わった部署だ。
遺体捜査官は本部の場所は勿論、職務内容も身内にすら明かしてはならないのだ。それは麻薬取締官と同様に気密性を重視される職業のためであった。
そしてもう一つは電話対応や捜査資料を作成する、通称CSC(Call Support Controlの略)であった。このCSCは本部内の地下にあり、地上の遺体捜査官と連携して、特に捜査情報を専門に扱う部署であった。
そのため、インターネットで遺体 捜索と打ち込んでも、遺体捜査官に関する情報は一切出てこないのも、CSCが情報を管理しているためだ。
さらに右も左も分からない新人は雇わず、熟練のカウンセラーや元医者などの専門分野に特化した知識人で構成されており、立ち代り入れ替わりで、現役の情報屋または、探偵やハッカー経験者が、四~五人ほどCSCに常駐することが可能な体制を整えた。
つまり電話対応はCSCが行い、外部の人間に捜査資料の作成を委託していた。情報が漏れないため、委託するよりも以前に必ず決まった人物へ相手の身辺を探らせた。問題なしと判断された相手のみ、職務に加えるという徹底ぶりだ。それが安全性と稼働率を思案した結果であった。
一般人であれば情報に秀でた者を雇えば、情報屋か探偵のどちらかを介して本部に話が通されて、そこで初めて捜査対象と見なされるのだ。勿論だが、依頼主には伝達するかどうか尋ねることはあるが、実際に伝達するのは雇われた側なので、情報が漏れることはなかった。
雇われた人間が本部に関する情報を漏えいした場合は、責任者に対して営業停止処分を勧告が可能となり、またその組織に対して家宅捜索で証拠があがれば損害賠償責任を問われ、非公開裁判で裁かれることになるため、今まで本部の情報を外に漏らした前例自体がなかった。
警察のように、多少不服でも上の命令には従うといった、縦社会は本部にはない。しかし、その代わりに警察よりも、遺体捜査官本部は、強い権限を持った組織だ。そのため、一部の情報屋の間では、捜査官らを卑下して“警察の敵”と呼んでいた。
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