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「実はね、私も外国に行くことにしたの。」
「え、お前も…?」
「うん、私もあの家から出なくちゃいけないって思ってたから…」
「だけど今の仕事場で楽しそうにやってたじゃないか。」
昇太に言ったほうがいいよね…。味覚障害のこと。
「私、パティシエ失格なの。」
昇太は目を見開いた。
「味が分からなくなった。味覚障害だって。何年もかけるかもしれないけど絶対に治すから…」
そう言ったら昇太に抱きしめられた。
「ちょ…昇太!」
「ごめん…俺のせいだよな?」
「違うよ!なんで昇太が…」
「味覚障害は過度のストレスでなるって聞いたことがある。今回のことがお前に負担をかけた…。」
昇太の切ない声に涙が出そうになった。
「私は大丈夫だよ。味覚障害は、壁を乗り越えるチャンスだって思ってるから。」
私は昇太から身体を離し、再び向き合った。
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