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涙が出てきそうな未来の目。そんな姿は見ていられなかった。
「未来…。俺はお前を幸せにしてやれなかった。親離れなんて言ってるけど本当はこの現実から逃げたいのかもしれない。そんな俺でもお前は応援出来るか?」
「…出来るよ?決まってるじゃん。だって、兄妹でしょ?」
未来はもう、認めていた。俺たちが兄妹だってことを。
「未来ありがとう。いつもお前に助けれてばかりだ。俺はもう、行く。頑張れよ。お前がパティシエの女王としてまた輝いて一面を飾るのを楽しみにしてる。」
俺が言うと、未来はいたずらっ子のように笑った。
俺は背を向け歩き出した。後ろは振り向かない。そしたら、涙が出そうだから。
歩いていると未来の泣いている声が聞こえた。今すぐに行ってその涙を止めてやりたい、拭いたい、抱きしめたい…。
でも、俺にそんな資格はない。
ただ、歩くだけしか出来ない。
未来、俺は最後まで役に立たない男だったけど、お前を遠くから見守ることくらいはさせてもらう。
頑張れよ…たったりひとりの俺の妹。
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