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「真守ぅ!」
勢いよく部屋の扉が開かれ、剣道着姿の少年が飛び込んできた。
中にいた俺は、すぐさま振り返り身構えたが、入ってきた少年を確認すると『なんだ…』と構えを解く。
「千聖ちゃん経由で藍原に聞いたけど、ほ…本当に出場するのか?」
少しの間のあと、息を調えながら、剣道部の練習を抜け出してきた少年・三年の濱田が、中にいた同部屋で恋人の俺・城島真守に恐る恐る聞いた。
「“彫刻選手権”だろ?二年の時に見たけど、なんか面白そうだし、高校時代の思い出作りにもなるかなって。俺達三年だから、最後だろ?」
俺は輪になったヘアゴムを口にくわえ、『千聖も誘ったけど、まだ下手だから今回出ないってさ』と肩で揺れる自慢のさらさらの髪を纏めながら答える。
「あの超絶舌技を俺以外の他の奴らの前で披露するんだぞ!アレを拝めるありがたみも価値もわからない連中の方が多いのに、見せても仕方ないだろ!」
濱田は俺の前で手を振り回し、必死に止めさせようと説得を試みる。
「べつに他人に見せたいわけじゃないよ。面白そうだって思うだけ」
だが当の俺は、あっさりした調子で、くわえていたヘアゴムに指を入れ髪を一つに結い始めた。
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