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西の空が真っ赤に染まる時間になった。私は、折り畳んだ母の日傘を持って歩いていた。母は、私の肩に手を置き、私を杖のようにしながら進んでいた。
「神様が助けてくれた、そうだよね?」
母が力なく言った。私はそれを無視した。
彼は、母が神の存在を否定したと同時に、私を解放した。
彼は、「電話なんかしてない」と言っていた。
私は散らばった母の物を集め、ほとんと放心状態の母を起こして、その場を後にした。
私の手を放した時、彼はこう言っていた。
「痛かった?」
私は、何も答えなかったが、彼がずっと私の手を優しく握っていたのは紛れもない事実だった。
私が死ぬと思った時に起きた異変は、彼が手を放した時に元通りに戻った。でも、私はそれを忘れられないでいた。だから、私の元から神は去っていったのだ。
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