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8歳の夏、私の身に起きたことは、いわゆる強姦未遂というものだったのかもしれない。それが事実か、もしくは他に何か信じがたいものがあるのか。母にはわからなかっただろう。
私にはわかった。それを知り、否定した。彼と同じように……
私は彼の言う「あいつら」を見たのだ。
廃墟の団地で、誰もいない部屋の全ての窓から、あいつらは私たちを見て、何か生と死に関わることを話していた。
神様はいてくれて構わない。でもあいつらの存在まで認めてしまうことになるのだけは避けたかった。
私は、真っ向から否定するのではなく、少しずつ疑問を抱き、できるだけ丁寧に、神の存在を自分の世界から追い出した。そして、自分の身をあいつらから守ったのだ。
彼が私に教えてほしかったこととは、きっとそういうことなのだと思う。
私は彼宛てに無記名で手紙を書いた。『神はいない』という題名の手紙だった。
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