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「いえ、大した事ではない。…君、うちにノートを取りに戻りましたよね?その時、何か見ましたか?」
僕は頷いた。
「誰にも言わないよ。」
先生は少し考えてから、「そうですか…」と目を伏せた。
「出来れば、あんな事は忘れて下さいね。」
「うん。」
男と女が、何をどうするかくらい、知ってるよ。
いちいちショックを受けてられるか。
僕は子供じゃない…いつまでも子供扱いはやめてくれよ。
「では、教科書の60ページを開いて…ふふ、落書きだらけですね、相変わらず。」
先生の指、綺麗だ。
笑う口元も、薄くて…少し赤くて。
僕はどうしたんだろう?
先生が凄く気になる…。
「この辺は完璧ですね。おや、お茶を出すのを忘れていました。…待ってて下さい。」
後ろ姿…まるで女性のようだな。
父親と兄弟とは思えないほど、先生は中性的だ。
「君は若いから、これですね。」
ジュースを手渡された。
プルタブを開けると、プシュ、と炭酸が抜ける。
先生は、静かにお茶を飲んでいた。
睫毛、長いんだな。
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