aogami

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ピリリリ… 電話が鳴る。 先生は勢いよく立ち上がった。 「ああ、兄さんか。…うん、由良は来てるよ。…え?」 先生の声が一瞬、止まった。 「…仕方ないな。うん、いいよ。はい、分かったよ。ああ…」 だんだん、声が沈んでいく。 「父さん、何て?」 僕は電話の内容が気になって、先生の横から受話器に耳を押し付けた。 先生の細い肩が、僕の胸元にあたる。 僕はいつの間にか、先生の背を追い越していたのだ。 「由良、やめなさい。…切るよ。」 先生の髪、いい匂いがする。 僕は無意識に先生を壁際に押し付けていた。 先生の息が首筋にあたる。 何だろう…僕の心臓がドキドキしてる。 ずっと、このままでいたいような気持ちになる。 しかし、その願いはかなわなかった。 先生が怖い目付きで僕を見上げていたから。
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