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僕が再び玄関を開けると、男の靴は既に消えていた。
まるで、化かされているかのような錯覚…本当にあれは現実だったのか?
カレーの匂いが、鼻腔をくすぐる。
台所へ行くと、先生はなに食わぬ顔で鍋をかき混ぜていた。
「また雨に降られたんですか?」
びしょ濡れの僕をあきれたように見て、ため息をつく。
「シャワーを浴びておいで。風邪を引いたら大変です。」
僕は無言で風呂に行った。
そして着替えがない事に気がつく。
仕方ないから、タオルを腰に巻き付けて出ると、先生が自分の服を貸してくれた。
「…きつい。」
「我慢なさい。…それが一番サイズが大きいんですから。」
下、はいいとして(足首がだいぶ出るが。)上がヤバい。
仕方なく上半身裸でカレーを食べるはめになる。
「おいしいですか?」
先生はちらちらと僕を見てる。
「うん。」
僕は気づかないふりをする。
先生が男が好きな男なら、僕の身体はたまらないはずだ。
自慢じゃないが、わりと筋肉はついている方だ。
「君はあまり体毛がないね。…まだ子供の身体だな。」
しかし先生は僕をけなした。
「先生は毛深い男が好みなのか?」
言ってしまってから、あ、と思った。
「由良、それはどういう意味です?僕が男が好きなように聞こえますが。」
そうだろ。
隠してても、実際にそうじゃないか。
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