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…そしてまた、男物の靴が揃えて置いてあった。
雨の日ばかり狙いやがって…。
僕は、春奈に対する怒りに似た感情をそのままひきずっていたせいか、勢いよく、先生のうちに上がり込んだ。
寝室から呻き声が聴こえる。
さすがに踏み込むのも気が引けたので、僕はドアの隙間から、中を伺った。
目に飛び込んだのは、先生の血色の薄い肌…それがほの暗い部屋の中で、芸術品のように映えていた。
相手の男は、陰になって見えない。
先生を後ろから抱くように支え、舌を喉深くまで挿し入れている。
先生は恍惚の表情で、小さく喘いでいた。
やがて光がカーテンの隙間から射し込むと、先生の髪が光を帯び、蒼く輝いた。
…いつの間にか、男の姿は消えていた。
僕は布団に横たわる先生をしばらく眺めてから、寝室へ入った。
「由良か…?」
汗で濡れた先生は、切なそうに僕を見た。
僕は無言で先生の髪の毛を撫でると、指を背中に滑らせた。
先生の口から、声が漏れる。
…違う。
僕の望みは、こんな事じゃない。
このまま先生を犯せば、春奈と同じだ。
僕は先生の事が好きで、その気持ちをちゃんと受け止めて欲しいだけなんだ。
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