aogami

38/40
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
…そしてまた、男物の靴が揃えて置いてあった。 雨の日ばかり狙いやがって…。 僕は、春奈に対する怒りに似た感情をそのままひきずっていたせいか、勢いよく、先生のうちに上がり込んだ。 寝室から呻き声が聴こえる。 さすがに踏み込むのも気が引けたので、僕はドアの隙間から、中を伺った。 目に飛び込んだのは、先生の血色の薄い肌…それがほの暗い部屋の中で、芸術品のように映えていた。 相手の男は、陰になって見えない。 先生を後ろから抱くように支え、舌を喉深くまで挿し入れている。 先生は恍惚の表情で、小さく喘いでいた。 やがて光がカーテンの隙間から射し込むと、先生の髪が光を帯び、蒼く輝いた。 …いつの間にか、男の姿は消えていた。 僕は布団に横たわる先生をしばらく眺めてから、寝室へ入った。 「由良か…?」 汗で濡れた先生は、切なそうに僕を見た。 僕は無言で先生の髪の毛を撫でると、指を背中に滑らせた。 先生の口から、声が漏れる。 …違う。 僕の望みは、こんな事じゃない。 このまま先生を犯せば、春奈と同じだ。 僕は先生の事が好きで、その気持ちをちゃんと受け止めて欲しいだけなんだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!