覚悟を決める

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覚悟を決める

*日記より小噺。 かつん かつん かつん 自分の足音が廊下に響く。 辿り着いた自室のドアを僅かに開け、間に体を滑り込ませた。 ガチャリと施錠し、漸く大きく息を吐く。 ドアに背を預け、そのままずるずると座り込んだ。 今日の昼間にあった出来事は、今でも鮮明に脳裏をよぎる。 九条の観察する温度のない瞳が浮かんだ。 あの瞳の色は、見覚えがある。 否、身に覚えがある。 観察をする、その部分は或いは自分と近い所があるのかもしれない。 (あの人は、私が協力すると言った事実を他の守手に言うのだろうか…。 分からない。 あの人は暗すぎて行動が読めない) 俯いて、しゃがみこんだまま、己の肩をきつく抱いた。 (でも今は、九条さんの側に居るしかない) 弱気な自分が顔を出す前に、自分に渇を入れる。 立ち上がり、机の引き出しから小箱を1つ取り出した。 開けると中身は何もない、空箱。 「しばらく、おやすみなさい」 常に肌身離さず着けていた空色の石のネックレスを外し、箱の中にしまった。 蓋を閉め、小さな錠をかける。 (もう、躊躇わない。九条さんの事も、遠野さんの事も) 一度目を伏せ、胸中で誓う。 小さく溜め息ともつかない息を吐き、それと一緒にくう、と腹が鳴った。 そのままベッドへどさりと倒れ込む。 先程食堂へは行ってみたものの、食事を前にしても食指も動かず、結局殆ど手を付けずに残してしまった。 今まで食べていた食事の温かさは、作った人の温かさだったのかもしれないと、小さく苦笑いする。 「遠野さんのご飯が食べたいな…」 ぽつりと呟いた言葉は誰に拾われるでもなく、夜の帳に解けて消えた。 ********** これからしばらくは千鳥のネックレスが消えますよっていう裏話。 ネックレスは昔貰った大切な物。 『千鳥』として動くんじゃなくて、より効率的に、より周りを巻き込まないようにっていう。 でもそうやって自分一人で何でも決めて周りをおいてけぼりにする方が駄目なのにね。
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