平凡な一生、一瞬の輝き

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独立は妻に反対され、真面目に働いた会社からは干され、更に妻に愚者扱いを受けて。 死にたいと思った。 気付けば、私が一生働いても到底買えないだろう高層マンションの屋上から、飛び降りようと足を踏み出そうとしていた。 ほんの一瞬 「パパーッ」と、嬉しそうに駆け寄る娘が頭に浮かんで、瞼に熱いものを感じた。 そうだ…私はまだ、娘を一人前にする迄は頑張らなければならない。 その一心で踏みとどまった、あの頃。 けれど、その可愛かった娘も今では 「汚いから近寄らないで」と私を爪弾きにする。 まるで妻が二人いると思う程に、ソックリになってしまった。 ……私には、もう 頑張る目標も無くなってしまったのだ。
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